大有の匠たち

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徳畑 憲仁

眼光。眼差し。目力(めぢから)・・・。

最初に、印象深く惹きつけられたのは、彼の視線だった。

それは決してギラギラしたものではなく、青い炎のような、冷静な計算と判断を感じる、シャープな眼差し。

作業服に身を包み、CADの画面に絶えず向かっている設計室で、ふと手を休め、背もたれに身を預けた時も、宙をさまようその視線は、青い炎が消えていない。
切れ目なく何かを考えていることを表す色を放っていた。
クライアント・ユーザーからの、たとえ漠然とした要望やアイデア・思いつきでさえ、一つひとつ確認し、整理して、現実のモノとなる"絵"を描く。
そのために、考えて、考えて、考え抜く。
デスクの目の前にあるCADマシーン以上に、彼のコンピューターは回転しているのだ。
青い炎は、まるでPCが作動している時に点滅するハードディスクランプのよう。

その彼には、設計における、ひとつの哲学がある。

「使いやすい機械は、美しい」

大有が創りあげていく製品は、クライアント・ユーザーからのオーダーメイド。
「普通の一般的な商品とは、発想がぜんぜん違うんです。『多くの人が欲しがって、たくさん売れる、ヒット商品』の開発設計ではないんですね。マスに受けてもあまり意味がない。極端な言い方をすれば、100人のうち1人でもOKと言ってくれれば、それでいいんです。“最も重要な人”1人が満足してくれるようでないと、いけない。」

だから、「あんなことも、こんなことも」と、たとえ多岐にわたる要望が上がってきたとしても、「いろいろな多様な声に惑わされちゃいけないんですね。一番大事なのは何?と」。
「最もやりたいこと、やらなくてはならないことは、何なのか」そして「誰が使うのか」を、追究する。時にはクライアント以上に、5W1Hを徹底的に掘り下げる。
物事に優先順位をつけ、枝葉に目を奪われず、一度、『断捨離』を遂行する。設計が進んでも、この基本に戻って確認し、進む方向がぶれていないか、ゴールに向かって真っすぐ最短距離で進んでいるかを反芻してみる。

すると磨きぬいた吟醸米のように、シンプルで光り輝く“本質”が見えてくる。

「核がわかれば、物事はシンプルになる。そのシンプルさは、やがて、形に表れるんです。例えば車、スポーツカーでもそうです。シェイプの美しい車は、シンプル。何のための、誰が運転する車かが、研ぎ澄まされていますから。」

十分な設計の知識と経験・・・。しかし、広いこの世には、彼レベルの熟達者は、他にも少なくないかもしれない。
ただ、その小手先に溺れて慢心するのではなく、『核』を見抜き考え抜く彼の流儀こそ、オンリーワン製品を創り上げる匠の技。

Only Oneは、青い炎とともに、創られる。

撮影・執筆/“大有の匠たち”取材班

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